褄切伝蔵
褄切伝蔵
褄切伝蔵(つまきりでんぞう)は、ナント種苗株式会社が改良して作った、ダイコンの品種です。
どこにでもある普通のダイコンに見えますが、褄切伝蔵には特別な特徴があります。
それが、加工に向いた品種である点です。
一般的なダイコンといえば、肉質はみずみずしく、
切った時には切り口から水分があふれますし、
ダイコンおろしなどにした時にも水分が出ます。
ところが、褄切伝蔵は肉質が非常に硬く、水分が出にくい性質を持っているのです。
この性質によって、ダイコンおろしや刺身などに添えるツマへの加工がしやすいのです。
加工に向いているのは、肉質だけではありません。
褄切伝蔵は青首系の品種であるにも関わらず、
肩の部分に入る緑色がかなり薄く、しかも範囲がとても狭いです。
通常、緑色になった部分は、皮を剥いても緑が残ることが多いですが、
褄切伝蔵は肉色に緑が残りにくく、肩から先端にかけて、全体が白色です。
ダイコンは、皮を剥いてすぐには白色に見えていても、
細かく切ると透明感が強く出るものが多いです。
褄切伝蔵は、細かく切っても白色が残りやすく、
他の食材と合わせた時に色を映えさせることができます。
ツマなどの生加工の他、おでん用のくりぬきにも利用できるので、
加工用として幅広く活用できます。
褄切伝蔵は加工用において、利用価値が非常に高い品種ですが、
栽培するのも難しくありません。
耐暑性を持っているため、通常の秋まき栽培に加え、春まき栽培も可能です。
また、晩抽性もあるので、春まきでもトウ立ちしてしまうことが少なく、
ス入りも遅いので秀品率が高いです。
さらに、暑い時期に出やすい、
赤芯症や黒芯症といった生理障害の発生も少ないです。
草勢が強く、早生の性質もあるので、通常よりも肥大が早めです。
そのため、通常であれば大きく育てるために、
長く畑に置いておくことでス入りやトウ立ちの可能性が高くなるところ、
褄切伝蔵なら早めに大きくなるので、
さらにス入りやトウ立ち、高温障害が回避しやすくなります。
春まきでは病害虫の発生も懸念されますが、ウィルス・バーティシリウムや萎黄病、
軟腐病などの病気に強い性質を持っているので、安心して栽培できます。
春と秋に栽培ができるので、中間地であれば、
4月中旬~5月中旬か8月中旬~9月中旬、
暖地なら3月下旬~4月下旬か8月下旬~9月下旬に播種が可能です。
中間地よりも寒さの強い寒地では、春や秋栽培というよりも、
6月~7月に播種する夏まき栽培に適しています。
[褄切伝蔵]ナント種苗株式会社
■特徴
・見た目は標準的なダイコンの姿をしていますが、
加工用に向いた性質を持ったダイコン品種です。
・青首系の品種の中でも、肩に入る色がかなり薄く、しかも範囲が狭いです。
・淡い緑色に染まった部分の皮を剥くと、肉色が緑になるものが多いですが、
褄切伝蔵は肉色に残る緑も非常に薄く、白に近いです。
・肉質が非常に硬く、カットした時に出る水分も少ないので、ツマなどの加工に向きます。
・カット断面が白く、収穫後の劣化や変色もしにくいので、加工後の店もちも良いです。
・全体が円筒形に整っているので、おでん用などのくりぬき加工にも適します。
・晩抽性があるので、秋まき栽培だけでなく、春まき初夏収穫が可能です。
・耐暑性が強く、暑い時期に発生しやすい、
赤芯症や黒芯症といった生理障害が少ないです。
・同社から出ている「夏の砦」に比べて早生なので、
肥大が早く、収穫までの日数が短いです。
・大きく育てるために長く畑に置くことで起こるス入りやトウ立ち、
高温障害などが発生しにくく、2L~3Lサイズまで待ってから収穫できます。
・ウィルス・バーティシリウム、萎黄病、軟腐病に強く、育てやすいです。
・中間地では4月中旬~5月中旬か8月中旬~9月中旬、
暖地なら3月下旬~4月下旬か8月下旬~9月下旬に播種が可能です。
・寒地は6月~7月に播種する夏まき栽培に適しています。
■栽培
・基本の育て方は、一般のダイコンと同じです。
・葉はやや大きめの中葉タイプなので、
元肥を1割~2割減らして葉がちしないように注意します。
■参考
・ダイコン 地植えの栽培
・ダイコン プランターの栽培
・ダイコン 袋栽培
・ダイコンの収穫時期
・ダイコンの害虫
・ダイコン 太くならない理由は?